こんにちは。YOUTRUSTでテックリードをしている春日です。
今回はコードや設計の話ではなく、私たちWebエンジニアチームで続けている小さな社内制度について紹介します。その名も「WebエンジニアLT会」。週1回、持ち回りで発表しながら、普段の業務ではなかなか触れられない基礎知識を学び直す場です。
きっかけは「知ってるつもり」への危機感
日々の開発は「動けば良い」「既存のコードに倣えば良い」で進んでしまう場面が少なくありません。
- OAuthを使った認証機能を実装したことはあるけれど、Authorization Codeフローと OpenID Connect の違いを人に説明できるか?
- WebSocket で通信する機能を触ったことはあるけれど、HTTP との違いや接続が確立するまでの流れを図で説明できるか?
masterにマージした後、自分の書いたコードが本番に届くまでに何が起きているか、正確に把握しているか?
チームを見ていると、こうした「実は聞かれると答えに詰まる」基礎知識が、業務の忙しさの中でどうしても後回しになっていることに気づきました。個人の学習意欲だけに任せていても、優先順位はどうしても目の前のタスクに引っ張られてしまいます。
そこで、「業務に紐づく基礎知識を、チームで強制的に学び直す時間」を仕組みとして作ることにしました。それが今回紹介するLT会です。
「WebエンジニアLT会」のルール
Notionに残している開催概要はとてもシンプルです。
💡 目的 業務に紐づく内容でLT会を実施することで、日々の学習を加速させること。
📝 開催内容
- 週に1回の頻度で開催する
- 会ごとに担当者を設けて発表する
- 発表内容は自由に決めても良いし、事前にブレストで出したアイディアからピックアップしても良い(実務とかけ離れた内容にはならないようにする)
⚠️ 注意事項
- 発表資料にこだわる必要はない。学習した内容が伝われば十分。資料作成より学習そのものに時間を使ってほしい
ポイントは「資料は凝らなくていい」と明言していることです。LT会や勉強会が続かなくなる大きな理由の一つは、資料作りのコストが発表のハードルを上げてしまうことだと思っています。YOUTRUSTのLT会では、スライドをきれいに作る必要はなく、Notionにメモや図を書きなぐるだけでも十分としています。継続のハードルを下げることを何より優先しました。
またテーマ切れを防ぐために、「アイディアブレスト」という名前のストック用データベースも用意しています。思いついたときに各自がテーマ候補を放り込んでおき、次に発表する人はそこから選んでもいいし、自分で新しく決めてもいい、というゆるいルールにしています。
実際にやってみたテーマ
始めてから約1ヶ月半、これまでに次のようなテーマでLTを行いました。
- OAuthとOpenID Connect —— 普段何気なく使っている認証・認可の仕組みを、フローを追いながら整理
- YOUTRUSTのインフラ構成について —— 自分たちのプロダクトが動いているAWS環境の全体像
- youtrust.jpにアクセスしてから画面に表示されるまでを調べてみる —— DNS解決からレンダリングまで、1つのリクエストの一生を追う
- WebSocketでリアルタイム通信する流れ —— HTTPとの違いから、コネクション確立までの流れ
- masterにマージしてからデプロイされるまでの流れ —— GitHub ActionsでのCIとAWS CodePipelineでのCD、その先のECS Fargateでのローリングアップデートまでを一気通貫で解説
中でも「masterにマージしてからデプロイされるまでの流れ」は特に力の入った回でした。「merge → CIでのテスト → ビルド・デプロイ → 本番反映」という4ステップの全体像から始まり、GitHub Actionsで走る十数種類のチェック(RSpec、RuboCop、Brakeman、ESLint、tscなど)の分類、AWS CodePipelineの3ステージ(Source / Build / Deploy)、ECS Fargateでタスクがどう入れ替わっていくかまで、図解付きで整理されていました。
普段は「PRをマージしたらしばらくして本番に反映される」とブラックボックスのまま受け止めていたプロセスが、登場人物(CodeBuild、ECR、ECS Fargate……)それぞれの役割まで言語化されたことで、チーム全員の解像度が一段上がったと感じています。

やってみて感じている効果
発表者自身の理解が誰よりも深まる
人に説明できるレベルまで調べ直す過程で、「なんとなく知っている」が「ちゃんと説明できる」に変わります。これは発表を聞く側よりも、資料を準備する本人にとって一番大きな学びになっている実感があります。
「実は分かっていなかった」を言い合える空気ができる
LT中に飛び交う質問はレベルの高いものばかりではありません。「そもそもそれって何でしたっけ?」という初歩的な質問も歓迎される空気ができてきました。基礎を学び直す場だと最初に宣言しているからこそ、分からないことを分からないと言いやすいのだと思います。
チームの共通言語が増える
一度LTのテーマになった技術要素は、その後の設計相談やレビューコメントで「あのLTで話してた話だと〜」と引用されるようになりました。ドキュメントを読むよりも、一度誰かの言葉で聞いた話の方が記憶に残りやすいのかもしれません。
ネタが尽きない
ストック用のアイディアブレストには、まだ発表されていないテーマも並んでいます。
- useEffectを使うべきケース、使うべきでないケース
- MySQLの実行計画(EXPLAIN)とは?
- プログラミング原則について(DRY, SOLID, YAGNIなど)
- オブジェクト指向とは?
- アプリケーションセキュリティについて調べてみた
- DI(Dependency Injection)とは?
どれも「使ってはいるけれど、説明しろと言われると怪しい」テーマばかりで、しばらくネタ切れの心配はなさそうです。
さいごに
LT会自体は目新しい取り組みではありませんが、「業務に紐づく基礎知識に絞る」「資料に時間をかけない」という2つの制約を置いたことで、無理なく続けられる仕組みになったと感じています。
テックリードとして一番嬉しいのは、誰か一人が頑張って知識を溜め込むのではなく、チーム全員が持ち回りで「教える側」を経験することで、自然と技術的な自走力が育っていることです。
YOUTRUSTでは、こうした基礎から学び直せる環境や、日々の業務に地に足をつけながら技術を深められる文化を大切にしています。興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアル面談でお話しましょう。