こんにちは、YOUTRUST SREの寺井(YOUTRUST/X)です。
私はYOUTRUSTで使用しているライブラリやプログラミング言語のアップグレードを率先して進めており、ちょうど年の節目だったので数えてみたところ、2024年の一年間で500回のバージョンアップを行っていました。
今回は、私がどのようにして2024年の一年間ライブラリのバージョンアップに取り組んできたかを紹介したいと思います。
どうやってバージョンアップを継続してきたか
私がバージョンアップを進めているライブラリは、Webフロントエンド(React / TypeScript)とWebバックエンド(Rails)で使われているライブラリで、ネイティブアプリ(Flutter)で使われているライブラリは担当していません。(※こちらはいつも朝日さんが上げてくれています!)
私がSREに異動したのは2024年8月からですが、もともと技術的負債の解消やライブラリのアップグレードには強く関心があったので、SREに異動する前のプロダクト開発エンジニアの頃から各種ライブラリのバージョンアップに取り組んでいました。
Dependabot編
まず、毎朝出勤してから10分から30分ほどライブラリのバージョンアップに時間を使って、Dependabotによって作成されたPRをmergeしてから業務を開始しています。
入念な検証やアプリケーション全体のコード修正が必要なアップグレードの場合は、朝の時間にこだわらず日中に時間を作って対応しています。
バージョンアップを進める際に特別なことは何もしておらず、まずリリースノートを読んで変更差分を確認して、挙動に影響がないと確信できるとき以外は動作確認を行っています。
パッチバージョンアップの場合や、開発環境やテスト環境でしか使われていないライブラリの場合は、リリースノートだけ読んでmergeすることも多いです。
ライブラリに破壊的な変更が含まれていてアプリケーションコードの修正が必要な場合は、そのコード修正を先にリリースしてから再び動作確認を行ってバージョンアップを実施しました。
手動バージョンアップ編
ほとんど最新に追従できているライブラリの場合はDependabotによるPRで比較的容易にバージョンアップができますが、メジャーバージョンが遅れているライブラリや認証系のライブラリ、プログラミング言語やフレームワークなどは入念な検証やアプリケーションコード全体の洗い出しが必要なことが多いです。
私が2024年に対応したライブラリだと、例えばrubyやtypescript、sidekiq、axios、devise系のライブラリ、omniauth系のライブラリなどです。(※ライブラリ名なのですべて小文字で記載しています)
そのような場合は、以下のような手順で進めました。
- リリースノートを読んでライブラリの変更差分を把握
- バージョンアップの方針策定とレビュー
- アプリケーションコードに修正の必要があれば先にリリース
- ライブラリをバージョンアップしたbranchでsandbox検証
- 最悪の場合生じるリスクの評価と社内への周知
- あらかじめrevert PRを作成してすぐに切り戻せるように準備
- 万が一の際に影響範囲を抑えられる時間帯にリリース
- 本番環境で動作確認
また、どのライブラリのバージョンを優先的に上げていくかの判断は、バックエンドはbundle outdated
、フロントエンドはyarn outdated
コマンドを実行して最新でないライブラリ一覧を出力し、このままバージョンを上げなかったときに発生する問題の大きさやサポートが切れるまでの期間などを考慮して行いました。
※画像は2024/10/31時点の状態で、2025/1/6現在は多くのライブラリのバージョンアップがすでに完了済みです
2024年一番記憶に残っているライブラリバージョンアップ
ここまでほとんど一般的なことばかりになってしまったので、2024年にバージョンアップしたライブラリの中で特に大変だったsidekiqのメジャーバージョンアップの話を少しだけしたいと思います。
YOUTRUSTでは当時sidekiqのバージョンが5系で、最新である7系に上げるためにまずは6系に上げようとしていました。
いつも通りリリースノートを確認して、特にYOUTRUSTで対応が必要な変更は見当たらなかったので、アップグレードガイドに従って5系の最新系から6系の最新系にバージョンアップするPRを作成しました。
すると、なぜかsandbox環境でのデプロイにだけ失敗してしまっていました。
改めてリリースノートを詳しく読み込んでも原因の見当がつかなかったので、何度かバージョンを変更しながら二分探索のように範囲を絞っていくと、デプロイ失敗の原因はバージョン6.0.5
に含まれていることを特定できました。
リリースノートではなくcommitを1つ1つ読み進めていくと、こちらのcommitで環境変数RAILS_ENV
よりも先に環境変数APP_ENV
を見にいくように変更されていました。
YOUTRUSTでは環境変数RAILS_ENV
でrailsの環境(development/test/production)を管理しているのですが、合わせて環境変数APP_ENV
も使用してWebアプリケーションの環境(development/sandbox/production)を管理していたため、こちらが先に参照されるようになり、その結果sidekiq側で想定していない環境名であるsandboxが指定されたことでデプロイが失敗していました。
原因が分かってからは環境変数APP_ENV
を別の環境変数にリネームして簡単に対応することができましたが、今回のようにリリースノートを読むだけでは予測することができないプロダクト特有の問題もあるんだなととても勉強になりました。
感想
今回は、2024年の一年間ライブラリバージョンアップをどのように継続してきたかを書いてみました。
私はライブラリのバージョンが上がった状態を保つことにとても充実感を感じ、バージョンアップ作業も全く苦に感じないので、もしかしたら少し自分に向いている領域なのかもしれないなと感じました。
以前RubyKaigi 2024事前勉強会で松田さんが言われていたように、ライブラリのリリースノートやPRを見る度に、RubyKaigiや各種イベントで直接会ったり知った人たちの顔が少しずつ思い浮かぶようになってきたのも楽しさの1つの要因だと思います。
※該当箇所は59枚目から
railsをはじめとして引き続きバージョンを上げる必要があるライブラリがまだ他にもあるので、2025年も楽しみながらライブラリのバージョンアップを継続していこうと思います!
最後に
今回紹介したライブラリのバージョンアップのように、YOUTRUSTでは技術的負債の解消に力を入れており、エンジニアが開発しやすい環境づくりに力を入れています。
技術的負債の解消やパフォーマンスの改善に興味があり、私と一緒に取り組んでくれる仲間を絶賛大募集しています!
少しでも興味がある方はぜひカジュアル面談にご応募ください!